なぜ有利か? その2
もう一つの脳の性質、働きを理解しましょう。
それは、神経伝達物質の「ドーパミン」と「アドレナリン」の働きです。
朝の脳では、寝ている間に蓄積されていたやる気を生み出すドーパミンが、脳の前頭葉から脳の各部分に放出され、記憶や認知作用をつさどる脳の中枢神経の働きが強まるとされています。また、ドーパミンは、快感物質とも呼ばれていて、脳が気持ちよいと感じるときは、ドーパミンが大量に分泌されているときだと言われています。
したがって、ドーパミンが大量に放出されている早朝に勉強すると、その効率・効果がとても高くなるのです。そして、達成感や充実感を味わいながら勉強すると、人間は快感を感じるので、よりドーパミンを放出されて、益々良い方向に回転していきます。
逆に、学習のメカニズムの観点から見ると、人間の脳はドーパミンが分泌された時の行動を行動を記憶します。そして、ことあるごとにその快感を再現しようとします。そして、これが繰り返されると、脳内では神経細胞が繋ぎ代わり、新しいシナプス(神経回路)が生まれます。つまり、学習活動が上達していくプロセスができあがっていくわけです。
もう一つ、朝目覚めるとアドレナリンが脳内で大量に分泌されることも知られています。アドレナリンは、一種の興奮剤であり、覚醒作用があります。つまり、ドーパミンとアドレナリンの両方が大量に分泌されて、朝の集中力、やる気、すがすがしさ等が得られるわけです。
ところが、夜になって脳が疲れてくると、なかなかドーパミンが分泌されなくなってきます。既に、身体と脳は休みたがっており、休息して明日に向かってまた脳内にドーパミンを生成して蓄えようとし始めるからです。なので、脳の働きを考えると、夜は勉強する時間帯には向いていないのです。
このように、脳の性質・働きを理解し、それに合わせて脳を活用して勉強すると、その効率や効果を最大限に引き出すことができることが見えてきます。
ここで注意点が一つあります。睡眠さえ十分取れば、ドーパミンは大量に放出されるのでしょうか。たとえば、昼夜逆転している人が、熟睡して午後に起きた時、ドーパミンが大量に放出されるかというと、どうもそうではないそうです。身体の疲れはとれても、朝のようにドーパミンは多量に放出されません。
これは、身体の全体的なリズム、つまり、生体リズムにあわせてドーパミンは放出されており、それからはずれた生活をしていると、ドーパミンそのものをあまり作り出さなくなり、元気のない生活となってしまいます。つまり、健全な生活リズムを送っていないとその効果は期待出来ないのです。
このようなドーパミンがあまり放出されていない状態では、自分の意志の力で頑張らないと勉強はできません。これは、自然に逆らった行動となるので、精神的に辛い作業となり、どうしても無理が生じてきます。健全な生体リズムの元で早朝勉強を行えば、自然にドーパミンとアドレナリンが涌いてくるので、精神的に無理に頑張ろうとしなくても、自然に勉強に集中できるのです。この自然な朝の集中力を使わない手はないでしょう。
- 朝は自然にドーパミンが大量に放出される。
- 快感を感じて勉強すると、学習行動が上達する神経回路が
形成されていく。 - 朝は、アドレナリンも大量に放出される。
- ドーパミンを自然に放出させるためには、生体リズムに沿った
生活が必要である。